[文学] 典型的テロリスト
リチャード・パワーズ 『舞踏会へ向かう三人の農夫』 を途中まで読む。 第五章のテロリスト像が哀しい。 こんなあっさりしたストーリーでテロリストを描ききった例はまれではないか。 「典型」 なんて、 社会主義リアリズムの用語を思い出してしまったが、 これこそ典型。この孤児にヴィースははじめて恐怖をおぼえた。 女が受胎の瞬間を感じとれると思いこむほど無知な人間となれば、 もはや護るのは不可能であり、 救うのも、 さらには、 世界と和解させるべく導いてやるのも不可能だ。 そうヴィースは考えた。 まっとうな思考である。 どんな場合でも、 無垢な者ほど危険な人間はいない。
柴田元幸訳。
