[詩] 月のドラゴン ver.2
陽が落ちるころどこからともなく現れて
暮れなずむ空に向け
きょうもドラゴンは月を吐く
いったい、おれは
どこから湧(わ)いたか
用がすんだら
どこへ行くのか
吐いたばかりの月を見上げて
昔の歌を歌っても
《赤い夕日の 硝子(がらす)の窓で
君としよんぼり 涙にくれた》
いったい誰の思い出なのか
涙にくれてどうしたのだったか
自分にわかるはずもない
《聞いて下さい スコツチ服の
ジヨンニー・ハートは 捨てられましヨか》*
ああ、地上では
そんなことがあったんだろう
だからどうした
と赤い眼を怒らせて
ドラゴンは戸惑うばかり
* 野口雨情「月の出」