浦島雑誌
2006-01-24
[芸能社会]  不幸な時代の予感
不幸な時代が来るかもしれない。おれ個人ということではなく、社会の多くの人が自分を不幸だと感じている時代。暗い時代かって? そうだろうね、不幸が明るいはずはない。でも、悪いことばかりではないだろう。―― と、そんなことを思ったのは、青山真治監督の新作『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』のプロモーション記事を読んだから。



以下、映画公式サイトの記事。

西暦2015年。
日本をはじめ世界中に正体不明の致死ウィルスが蔓延していた。
メディアはそれを “レミング病” と呼んだ。
感染者は〈自殺〉という方法で死に至り、日本では300万人、米国では800万人が自殺していた。人々が希望を見失いかけ、絶望感に満ちた世界で、唯一の抑制方法が探しあてられる。
それは、日本のあるミュージシャンが奏でる “音” を聴くこと。
果たして彼らの “音” はこの絶望感に満ちた世界を救えるのか。…

映画公式サイト » エリ・エリ・レマ・サバクタニ

うーん、音楽による癒しとか救済とかいうんだったら気持ち悪いが、どうなんだろう。宣伝コピーや予告編の音楽にはそんな気配が漂ってるが、それはそれとして、2015年という設定がいかにもぴったり。どうぴったりか。言われているようにこれから社会の階層分化が進むとすれば、人々の多くが、ああ自分は下層民なのだと自覚するに至る時間として、ちょうど十分と思うからだ。そして、悪いことばかりでないというのは、そのような社会はすぐれた芸能を生むであろうから。一方で上層民による日夜のどんちゃん騒ぎ、一方では下層民が日々味わう不幸の数々。そうした格差が深みのある芸能を生まないわけがない。
個人的なことを言えば、この30年間、愛唱したいようなポップスに出会ってないが、不幸な社会は歌謡曲の復興をもたらすだろう。前向きの一見明るい歌ではなく、後ろ向きであったり暗かったりしても、あるいはそれゆえに心のヒダに触れる歌。2015年、痴呆と老衰で死の床にあるかもしれないおれを、どんな歌が送ってくれるか。

浅野忠信主演。28日封切り。筒井康隆が富豪役で出演ということなので、未読の『美藝公 』と『ジーザス・クライスト・トリックスター 』を読んでから見に行くのも一興 ―― と思ったのだが、どうやら品切れらしい。
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