[社会] 無思想の発見
養老孟司の 『無思想の発見』 を読んだ。 あれだけ本を書きまくって、 まだ勝負玉を持っていたことにあきれる。いったい、 著者であるはずの私は、 なにを論じたいのか。 「俺には思想なんかない」 という思想を、 なんとか維持するにはどうするか、 じつはそれを考えているのである。 「俺には思想なんかないという思想」 を 「どう維持するか」、 それは思想ではなくて、 具体的方策である。 具体的方策なら、 本なんか書かずに、 別なことをすればいい。 ふつうはそう考えるであろう。 しかし、 これはあくまでも 「思想の問題」 である。 思想の問題にはいまでは思想的に対処するしかない。
ノーベル賞がどうのこうのという程度の提案ではない。 なにしろ、 《「思想なんてものはない」。 これは思想におけるゼロの発見である。》 との宣言である。 インドにおけるゼロの発見以来の文明史上の大発見である。 日本人の無思想性については、 これまでも多くの論者が語ってきたが、 この本はさらに決定的な一歩を進めて、 この無思想性こそ、 数学においてゼロが果たしている役割を思想の世界で果たすはずだという。
問題提起はした、 あとは読者が考えなさいというのが著者の姿勢で、 このテーマは今回限りといった作りの本だが、 続編はないのだろうか。 たしかに、 語るべきことはもう語られていて、 おまけに、 日中友好なんて難しくないとか、 実践・応用サンプルまで付けてくれているのだが、 物足りないと思うのは読者の甘えというものか。
