2006-02-18
[歴史芸能]  民衆の影武者
丸谷才一、 山崎正和 『日本史を読む』 から。

山崎 (…) 本来は人間、 律儀に生きている人が大多数でしょう。 目的について不信のない人、 毎日働いて給料を貰って、 これで世の中に盡くしていると思える幸せな人です。
 しかし、 そう思えない人間がやたら出てきた。 そうすると自分というものを過剰に人に見せる。 ここから、 後には伊達者ですが、 当時の言葉で言えばかぶき者が出てくる。 そんな意味で名古屋山三は、 蒲生氏郷の小姓であって、 それも浪人したというのが大いに象徴的だと思うんです。 (…) すべての人が、 少し美男であって浪々の身であれば、 自分を名古屋山三に見立てて生きられる時代であった。 そうしないと生きられない時代であったというふうにも言える。 だから舞台の上の名古屋山三は民衆の影武者なんです。

「少し美男」 というのが肝要。 早い話が、 ほとんどの若者。 少しの美貌、 少しの腕力、 少しの体力、 少しの知力、 少しの商才、 少しの度胸、 要するに本人が錯覚できる程度の少しのとりえがあれば、 帰属先などなくとも、 自分を名古屋山三郎に見立てて生きることのできた時代。 あるいは、 そうせざるをえなかった時代。

名古屋山三の条件。 美貌。 帰属意識の欠如。 死者であること。 尾崎豊などは当てはまりそう。
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