2006-02-20
[文学]  秋成の物語論
たまたま目にした 『源氏物語』 の一節が上田秋成を思わせたことは、 先のエントリーに書いた。 そのとき思い浮かべたのは 『雨月物語』 よりも、 まず 『春雨物語』 だったのだが、 『春雨-』 も 『源氏-』 を意識して書かれたものらしい。 『春雨-』 の序文に 「物がたりざまのまねびはうひ事なり (物語めいた作品を書くのは初めてのことだ)」 とあって、 この 「物がたり」 とは、 平安朝の文体で書かれた物語のことだという。 以下、 美山靖校注 『新潮日本古典集成 春雨物語 書初機嫌海』 の注による。

秋成は 『ぬば玉の巻』 という作品に登場させた柿本人麻呂の口を借りて、 物語に関する自説を述べている。 曰く、 中国にも物語はあって、 それは寓言 (そらごと) を方法とするものだから、 必ずしも事実を書いているとは言えないが、 「作者の思ひ寄する所」 が書かれている。 そのためには 「位高き人の悪 (にく) みを恐れ」 て、 「古 (いにしへ) の事にとりなし、 今のうつつをうちかすめつつ、 朧げに書」 く必要がある。 わが国の 『源氏物語』 がそれにあたる、 云々。

ついでに、 「書初機嫌海」 を見たら、 ここでも序文で紫式部に触れているではないか。 秋成の頭の中には、 いつも式部と源氏がいたのだ。 知らないでびっくりした自分が無教養、 勘は良かったとしても。
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