2006-03-03
[文学詩論]  六人の中国人の漁師 (1)
上等な詩の味わいというものは、 数学のわかる人が、 美しい定理やその鮮やかな証明を読んで味わう気持に似ているのではないか。 詩と数学は、 見かけ以上に似た者同士かもしれない。

先夜
新月のもと
カッコー時計のねじはしっかり
巻かれ
サンペドロの
どや街で
かれらは六人の中国人の漁師を呼びとめた
長靴のなかに
二千八百万ドル相当の麻薬を
隠し持っていた。

かれらの話では哀れな
夢のなかで
ねむっている妻の体に
蝶々を描いたのは
ハウスボートの
小人の老人だという。

絵描きたちは、 とかれらはいう、 いちばんの安値でただちに売り払う。

その間、 それを耳にした
香港のふとった男は
芸術はやめることにした、
そして
その間、 ミスター正義をして
新しい清潔なシーツを汚させるために
いらいらしていた
男はある数字をダイアルした
そして最後から二番目の
アメリカの
ヒーロー
の暗殺を
お膳立てした

誰も解けない難問、 じつはその存在さえ知られていなかった問題をみつけて、 みごとに解いてしまった珠玉の証明という感じはしないか。 ―― と、 そのように言えば、 いちおう自分の感想を述べたことにはなるが、 自分以外の人にも同じ感想を持ってもらうには、 どうすればいいのだろう。

上の詩は、 ブコウスキー 「六人の中国人の漁師」 の中上哲夫訳による全文 (『モノマネ鳥よ、 おれの幸運を願え』)。 原文を読んでないので、 以下述べることはこの訳文に負う。 (この項続く)

- 六人の中国人の漁師 (1)
- 六人の中国人の漁師 (2)
- 六人の中国人の漁師 (3)
- 六人の中国人の漁師 (4)
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