2006-03-08
[文学詩論]  六人の中国人の漁師 (4)
「六人の中国人の漁師」 を見て、 詩は数学に似ていると思った。 なぜそう思ったかはわからないが、 どう思ったかはわかる。 言葉になりにくい感覚なのだが、 あえて言葉に翻訳すれば、 「この詩は正しい。 正しいけれども解かれてはいない」 といったところだろうか。 で、 詩は数学の定理やその証明に似ていると書いたのだが、 自分の最初の感触に立ち返れば、 詩は解かれるのを待っているという意味で証明より定理そのものにたとえたほうがいい。

前項でみつけたブリッジを色分けしておく。 もうひとつ、 これはブリッジより一回り大きい構造なので別の名前が必要だが、 それも追加しておく。

[I]
先夜
新月のもと
カッコー時計のねじはしっかり
巻かれ
サンペドロの
どや街で
かれらは六人の中国人の漁師を呼びとめた
長靴のなかに
二千八百万ドル相当の麻薬を
隠し持っていた。

[II]
かれらの話では哀れな
夢のなかで
ねむっている妻の体に
蝶々を描いたのは
ハウスボートの
小人の老人だという。

[III]
絵描きたちは、 とかれらはいう、 いちばんの安値でただちに売り払う

[IV]
その間、 それを耳にした
香港のふとった男は
芸術はやめることにした
そして
その間、 ミスター正義をして
新しい清潔なシーツを汚させるために
いらいらしていた
男はある数字をダイアルした
そして最後から二番目の
アメリカの
ヒーロー
の暗殺を
お膳立てした

―― 中上哲夫訳

灰色でマークした最初の4行と最後の6行の対応が新しい発見。 はじめにカッコー時計のネジが巻かれる。 ネジを巻かれた時計は、 いつか鳴り出すだろう。 その期待あるいは不安に応えて時限装置の動き出すのが、 最後の6行ではないか。 ついでにみつけたのが、 オレンジでマークした 「カッコー時計」 と 「ダイアル」。 音の出るものという共通点によって、 これらもブリッジの働きをしている。

詩を書き進める原動力はパッションとスピードだから、 これらのブリッジや構造の機能に、 作者が初稿の段階から意識的であったかどうかはわからない。 推敲の過程でも、 どの程度意識的だったか。 もちろん、 かりに無意識だったとしても、 無意識の技巧と美学は働いている。

訳文をもとにこれ以上こまかく詮索するのはまずい。 そのうち原文を見て、 何か考えたら続きを書く。

- 六人の中国人の漁師 (1)
- 六人の中国人の漁師 (2)
- 六人の中国人の漁師 (3)
- 六人の中国人の漁師 (4)
この記事のトラックバックURL:
http://www.uraxima.com/notes/20060308.tb
おれジャック、 改名して今は浦島。


[浦島雑誌について]
- ブログ評論
- 管理室

[Twitter]


[タネ]
- 音素材
- 文豪ミキサー
- はてなハイク
- 無脳詩人

[ショートカット]
- Audacity
- KRISTAL Audio Engine
- Firefox
- Windows