記憶の中の光景を引っ張り出して
それを一行目に置く
すると
たちまち気がなえる
この程度か、 おれの記憶は、 おれの思い出は
げっそりして、 その行を削って・・・はいけない
削ってはいけない
結局は削るんだが
でもそれはもっと後のこと
記憶の中の光景は
いわば打ち上げロケットみたいなもので
一段目は切り離す
二段目も切り離す
御用済みの記憶は捨てて
あとに残ったのが作品というやつだ
で、 おれがいま書いてるこのくだりが
これも打ち上げロケット
ロケットだけ書いて
かんじんの人工衛星が、 火星探査船が
打ち上がらなければ
こいつはまるまる捨てられるのさ
ごくろうさんの一言もなく
いや、 うまく行ったときだって
いたわってなんかもらえないがね
うまく行ったときは行ったときで
やはりおれは忘れられる
というわけで
たまには、 ロケットだけの詩が
あってもいいか
と作者の顔をうかがうと
甘いやつだぜ
いいって言ってるよ
