[詩] 国栖
場所ははっきりしないたぶん栃木か群馬のどこか
自分が孤独だった日々
誤解されそうだが
それはおれが選んだ暮らしだったから
さびしいとか悲しいとか
そういうのとは、 また別の話
やってくるのは、 月一回の新聞の集金と
もちろん、 新聞配達は毎朝
来てたはずだが、 おれはまだ起きていない
そして、 駐在所の巡査
いや、 警察官の階級は知らないから
警部とか警部補とか
そういうものだったかもしれないが
ともかく警官がたずねてきて
そうさな、 小一時間
茶を飲みながら
プロ野球のこと、 長嶋のこと、 王のこと
子供のころ聞いたラジオドラマのこと
彼と我との川遊びの違い
なんとか尻尾 (しっぽ) をつかんで
手柄にしたい中年の警官と
つかまれる尻尾などないおれの
とりとめのない会話は
二、 三日おきに三月も続いただろうか
自転車を押しながら
雪道を鉄道駅まで
送ってきてくれたあいつ
このあたりにも
昔、 国栖 (くず) がいたのだと
そのことは風土記という本にもあると
おれが土地を去る日に
あいつがそんなことを言ったのは
ウソだったのか、 間違いだったのか
場所はもうおぼえていない
栃木か群馬の境あたり
