[詩] 浦島詩抄
浦島名で書いて、 あちこちに散らばってたり、 ディスクにしまってあった詩を、 以下にまとめた。 書いた時期はおもに98~00年くらいか。 もっと新しいのもある。 当サイト内でダブってるのもある。 整理は後日。春三月
あそこにも一つ
ここにも一つ
桜の枝に
男たちが吊るされている
女も吊るされている
風が吹くと
いっせいに花びらが降りそそいで
恐ろしくも懐かしい
春三月は
知恵の足りない男や女が
くびり殺され花に舞う月
雇われサンタ
自分は悪い人間だろうか
出番を待ちながら
雇われサンタは考える
そんなことはない
そんなことはないよ
でも、 だめな奴ではあるだろう
袋の底にマシンガン
雇われ仕事はきょう限り
ゴーレム
曲がりくねった路地
人の背丈にも足りない小さな家々
錬金術師小路で姿を消したら
あとはラビの手で
もとの土塊 (つちくれ) にもどしてもらうだけ
というのがゴーレム出没の
いわばお約束
まぬけな追跡者どもめ
おれはもう明日の晩まで
どこにもいないんだよ
やっと肩ですり抜けるくらいの幅しかない
路地を、 銃眼ににらまれながら
いくら探しまわっても
ゴーレムがみつかるはずはない
見ろよ、 月の光さえ白々と
なにもかも嘘だと言ってるだろう
おれもおまえもこの街も
なにもかも嘘
そう、 なにもかも
袋小路も地下道も
あいさつを交わしたばかりの行商人も
いつか見たはずの辻馬車も
その先にあるはずの曲がり角も
どれもこれも嘘なのさ
だから、 わかったら
さっさと家 (うち) へ帰るがいい
ベッドにもぐって
悪い夢でも見るがいい
眠れぬ夜を過ごすがいい
朝までたっぷりうなされるがいい
さておれは、 そうだな
泥の夢でも見るとしようか
羊の夢
ひつじが一匹、 ひつじが二匹
ひつじがひつじを数えて
そのまま眠り込んだら
もうひつじの夢から醒めることはない
眠り込む前はひつじだったが
眠り込む前の前もひつじだったのか
深ーいひつじの眠りの中で
ひつじはひつじ、 もう覚めることはなく
ひつじが一匹、 ひつじが二匹
ひつじが三匹、 四匹、 五匹…
数えても数えても
ひつじの夢はひつじの夢のひつじ
ひつじのひつじは夢のひつじの夢
いくえにも眠りこけて
もう解けることはない
秋夜
今夜も蝦蟇 (がま) となって
縁側から庭を見ていると
なにやら懐かしく
わびしさ限りなし
どこにどうして
俺はいたかと思い返せば
ここにこうして、 昔から
いたのだったと
土の塀にも石の庭にも
青い月の光が
笹の植え込みにも
あふれるほどにそそいで
誰もがそう言ってるではないか
眺めるまにも
おぼろな気配はさらに満ちて
ここはもう静かな湖の水の底
誘われて、 ゆらゆら俺も
月光に泳ぎ出そうか
村祭
黄色い犬と
赤い犬が
出たり入ったり
今夜の夢は
村芝居の夢
禿鷹
あの人もこの人も
このごろは
禿鷹の夢ばかり
つついてるのか
つつかれてるのか
なんだかとても
禿鷹の夢は分かりづらくて
それというのも
肩にとまった禿鷹が
考えをつついてしまうので
うめえ、うめえ
と舌を鳴らしつ
脳 (みそ) をつついてるのが
この私ならいいのだが
つつかれてるのが私なら
何をどう見分けていいものか
聞けば
あの町もこの町も
このごろは
禿鷹の夢ばかり
腹話術師
腹話術師に
悪い人はいない
自分でやってみれば
誰にもわかることだが
悪い人は腹話術師に
なれません
うそだと思ったら
腹話術師になったつもりで
自分のありようを
観察してみるといい
声を出してみるといい
まるごとすっかり
腹話術師のつもりになれば
心の内は黒くても
見かけは良い人
声も仕草も感じも良い人
そういう仕事なんです
腹話術師は
「なあ、 坊や
おじさんは悪い人かい」
「いいえ、 おじさん
腹話術師に
悪い人はおりません」
うん、 そのとおり
いい奴だなあ
坊や、 おまえも
月も出ごろの公園で
さあ今夜も稽古としよう
日も暮れよ
日も暮れよ、 鐘も鳴れ
時は流れよ、 わたしは残る
何事かと
橋の上に出てみたら
赤い長靴の大男が
小舟を蹴散らし
堰を破って
川をのぼってくる
大声で歌いながら
男が川をのぼって来る
日も暮れよ、 鐘も鳴れ
時は流れよ、 わたしは残る
赤い長靴の大男が
夜中に、
歌いわめきながら
川をのぼって来る日
そんな日があるはずだと
誰が承知していたか
村人は?
彼らは知っていたのか
わたしは知っていたのか
怖れつつ、 誰もが
その日を待っていたのか
いなかったのか
日はとうに暮れ
力なく鐘の鳴りはじめた村の
家々を蹴り潰し
田畑を踏み破り
時を流し去るために
赤い長靴の大男が
歌いわめきながら
川をのぼって来る日
思い出
古ぼけた詩集に
こんな一節をみつけて
懐かしさのあまり
《パリを襲うツェッペリンは、 いつもオリオンの中からやってきた》
ならば作者よ
わたしも言おう
あの懐かしい日々
わたしもパリを訪れていたのだ
地上の銃眼から
おまえが見たという黒い船
そう、 夜ごとオリオンのあたりから現れて
パリを襲ったのはこのわたしだ
その悠揚として、 凶々しく
轟音の空に浮かぶ
おのれの英姿に酔いながら
街々を焼き、 人々を逃げ惑わせ
やがて積み来った爆弾を投げ尽くすや
南天を駆けるオリオンを追って
帰途についた暗黒のツェッペリンは
どうやら、 作者よ
おまえも忘れ難いか
船長の家
船長の家は留守
ラジオは消えて
台所の物音もない
犬は吠えないし
物干し台も空 (から)
丘の上の船長の家に
太陽がいっぱい
亡国
「国は消えても
山河は残る」
亡国の詩人が、
のんきに歌いながらやってくる。
「いい時代でしたね」 とわたし。
「おかげさまで」 と詩人。
わたしは少しだけ彼をうらやましいと思う。 なぜなら、 こちら廿一世紀は、 国が消えると、 山河も消えてしまうような時代であるから。
「あまり深刻そうでもないな」 と詩人。
「ええ、 まあね」 とわたし。
ほんとうのところ、
消えようが、 消えまいが、
どうってことはないのである。
多少の意思は通じたか、
それから二人で、
歌の続きを歌った。
街
猪に似た獣を連れて
夜ふけの盛り場を
私が歩いている
後姿しかないので
私は振り返らない
連れの獣も
どうやら後姿しかないが
ときどき半分だけ振り返る
後姿+横顔の獣と
後姿だけの私
街はもうすぐ雪になる
ヒトデ
朝に近い夜
イノシシとなって
住宅街をうろつく。
カラオケ帰りの OL に突進
パトロールの自転車に体当たり
早起きの豆腐屋に暴れこんで
道具を蹴散らし、 居間を駆け抜け
また裏通りを走ってゆくと
ああ、 こんなところに
ヒトデが落ちてる。
電柱の陰から
ラクダが顔を出している。
おれ一人ではないんだよ。
砂男
砂男さん、 こんばんわ
フロックコートにシルク帽
手品師みたいな恰好をして
あなたは今夜も
人間の目玉を集めてるのですね
楽しいですか
やりがいはありますか
それとも、 ああそうでした
あなたは、 半月の巣に
子供たちを待たせてるんですね
子供たちは可愛いですか
お父さんのことは好きですか
その子供たちの餌に
人間の目玉を持って帰ってやらないと
いけないんですね
そんなことを言いながら
相手の油断を見すまして
ポケットに隠し持った目つぶしを
はい、 わたしにも
半月の巣で腹を空かせて待っている
子供たちがいるものだから
はい、 目つぶしの砂を
思いきり投げつけたのですが
敵もさるもの
コートの袖でなぎ払われて
どうやら、 ことは長引きそう
知ってましたか、 夜の路上で
目つぶしの砂を投げ合ってる男たちがいたら
それはわれわれ砂男族です
赤い仙人
赤い仙人だったら
家の内だな、 仙人だったら
まアまアそんな所かな
そしてようやく場所探しがはじまって
茶褐色と見えた池を、 ぼくらは訊ねた
湖水をそよがせ、 サラサラそよぐ葦の中に
小舟をならべた場所へ出た
奇妙なさびしい家だった
あれはいつかの家畜が訪れる舟
細長い奇妙な物さびしい家だった
細長い平たい家だった
顔を歪めて笑ってた
灯心草に赤い葦でも単調に青い葦でも
離れ小島に灯心草と言いながら
こう話しながらも指さした
しかめ面の赤い仙人
合唱団
―― メリエスに
自分の首を 投げ上げ 投げ上げ
首を投げて 五線譜に載せる ドの音
また投げて 五線譜に載せる ミの音
また投げて 五線譜に載せる ソの音
首を投げて
電柱のあいだに張った
電線の五線譜に載せるたび
訓練の甲斐あって
合唱団は 正確な音程で歌ってくれる
たのしいなあ
投げても 投げても また首が生えてくるので
合唱団長は 愉快でたまらない
メンバーは 女ばかり
男は 団長だけだから
それもたのしい
月男
月男がやって来る
縄梯子をつたって
月の世界から降りてくる
月男の来る晩は
誰ァれも月なんか見てない夜
ということになってるが
何かまうものか
誰に見とがめられても
月男は知らぬこと
チチチっと軽く舌打ち
いたずらっぽく
人差し指を立てて
「いいですか、 お嬢さん
この世には
月男なんていないんですよ」
そんなことを言って
あなたの夢に忍びこんだ月男は
それからどこへ行ったのか
長靴をはいた猫
長靴をはいた猫が
「旦那、 旦那にも
権利はありますぜ」
そうだろうか
長靴をはいた猫が探してるのは
若くて
度胸があって
見栄えがよくて
ひそかに何か怒っている男
と昔から決まってるが
あいにく、 おれは
そういうやつではないんだよ
おいてけぼり
たしか
本所のほうだったと思うが
おいてけぼり
というのがあって
貧乏御家人か何かが
日がな一日
釣り糸を垂れ
日の暮れかかるころ
ようやく一匹
釣り上げた鮒を
魚篭 (びく) に落として
帰りかけると
「おいてけ」
ぎくりとあたりを見まわすと
また
「おいてけ」
おいてけよ、お前
おいてけ、お前を
たしか本所のあたりだと
いうなら
きっとここは
本所あたりの
濠の底にちがいない
どんより淀んだ水底にも
暮れ方の赤茶けた光は
鈍く届いて
なにがしかの
寂寥は漂うのである
はないちもんめ
さあ買った
ふるさとまとめて
叩き売り
あの子もこの子も
恋しくて
憎し
恨めし
やる瀬なし
負けて口惜しいふるさとは
今日を限りの
二束三文
叩き売ったらどうするの
隣町までお女郎買いに
煙草でも
へんな犬だなあ
いまどき都会では見かけない雑種
おまけに
いまどき都会では見かけない野良
そいつがのこのこ
おれのあとをついてきて
おれが振り返ると
立ち止まるのだが
しっぽを振って
うれしそうでもある
どうだ、 お前
そこらで
人に隠れて
煙草でも吸ってみるか
無人踏切
いつのまにか廿一世紀
踏切番はいないし
人は通らないし
列車も来ない踏切の幽霊
ふと目をやれば
田んぼのむこうに
あれはもしかすると有人踏切か
裸電球の下で
踏切番の小爺さんが
急須から茶をついで
最後の列車を待っているのか
もーし、 小爺さん
こちらは廿一世紀です
そちらは何世紀ですか
とある肉屋の…
とある肉屋の店先で
知り合いが皮をむかれて
カギにぶら下がってたら
はい、 あなたならどうしますか
わたしなら深く同情して
去りぎわに
つい、 くすっと笑ったりして
無花果
日暮の丘に
無花果が一本
場違いな
でもさ
生えてしまったんだよ、 ここに
訪れるのは
甘党の蛇ばかり
アラビアの唄
砂漠に日が落ちて
夜となるころ
無頭女、 ランボー、 火喰鳥
あの懐かしい調べに
見ろよ、 連中ときたら
今日も笑いすぎて
涙が止まらないのか
あとに楽隊
残光を義眼に溜めて
春の夢
ごらんなさい
いちめんの菜の花です
昔このあたりでね
ぶっ殺したんです
棒切れに
糸を結んで
どこまでも続く菜の花の小川の岸で
魚を釣るふりをしていると
そんな夢を見ます
どこまでもどこまでも菜の花
春霞のかなたに
ぼんやり低い山なみ
汗ばむ陽光の下でうとうとしていると
そんな夢を見ます
思うにこれは春の夢です
面影
なにしろ
水棲の記憶が
抜けない連中だから
歩くところといえば
海辺、川べり
食うものといえば
貝、 水草
そんなことでは力が出まい
昔はもっと
うまいものを食ってたはずだ
と言ってやっても
へらへら笑って
とても聞くものではない
ひとの親切なんかうるさいだけで
いいから、 おっさん
ほっといてくれ
と言われたら
こちらとしても
陰険な目つきで見返して
干し肉を
かじり続けるだけだが
そうはいっても
こちらにも
かすかな記憶はあって
な!
と逆に問われたら
うろたえないわけではない
帰ろうぜ!
と誘われたら
どうなることか
こいつらと一緒に
水棲にもどる
道をたずねて
旅に出るのだろうか
落日に
―― ああ、 血の色だよ ――
染まる海辺で
目を尖らせて
睨み合うおれたちは
たがいに
鮫だった昔の面影を
読み取ろうと
いや、すでに
読み取ったのだが
ひょうたん気分
ぼんやり雲が流れて
何か行っちゃった感じ
風に吹かれて
よろけたはずみに
魂を抜かれた感じ
何のために旅に出たのか
聞かれて答えられない
ひょうたんの気持ち
花の精
花ざかりの森を
いつもの前かがみで
座頭が歩いている
殺されたのは二百年前
何のいいこともない
クズみたいな一生だったが
死んでから運が向いたか
桜の根っこに吸い上げられて
今では花の精
あいかわらず目は見えないし
破れ衣は昔のままでも
時は春 月の輝く夜だから…
時は春
月の輝く夜だから
私はフクロウになろうと思う
金色の眼から
あふれる月光
銀色の翼から
こぼれる月光
金と銀の光を浴びて
私は一羽だけの
森のフクロウになろう
ぼくの伯父さん
伯父さんが帰ってくる
海坊主になって
十年と十日のあいだ
沈んだ船にとじこめられて
海の底にいた船乗りは
もう人間にはもどれないけど
運がよければ
海の水と砂に育てられて
海坊主になるのだという
運のよかったぼくの伯父さん
十年と十日の昔
まだぼくの生まれる前に
南の海で沈んだきり
すっかり忘れられていた伯父さんが
もうすぐ帰ってくる
海坊主になって
月の夜ざらし
月の夜ざらし知らで着て、
今は夜神のともをする
---- 長谷川四郎
夜中の真ん中あたりを
前へ行ったり後ろへ行ったり
ひらひらふわふわ
夜神にもらった夜ざらしを着て
夜の世界を飛び続けていると
月が出てから沈むまでが
あきれるくらい長いので
それとなく夜神にきいたら
夜の世界の一日は
地上の時間のひと月なのだとか
わたしのことなら
もう心配はいりません
月の夜ざらしはとても軽くて
心が軽くなると
地上の記憶も
軽くなってしまうのです
ある晩
この野郎ふざけやがって
夜でも朝でも持ってこい!
と怒鳴ってやったら
てんこ盛りの夜を
どさっとテーブルに叩き付けられて
いや、 あわてました
しかも
コネクティブで
粘着なやつらしく
たかが夜のくせに
人間関係を迫ってくるではないか
違うんだよおれは
人間関係はもういいんだ
勘弁してくれよ
希薄な関係ね
わかるでしょ
おれ、 その線で行こうとしてるんだから
いや、 ごめんなさい
もう怒鳴ったりしないからさ
陳弁これあれこれ
へどもど小一時間もやったかな
急にさらっと
ほんとに急でした
さらさらっと粘りがとけて
そのまま外の闇へ
霧みたいに…
いや、 見届けるひまもないまま
消えてしまいました
なんだかこっちまで
しょんぼりしてしまうような消え方で
かわりにもう一度
おやじを怒鳴ってやろうかと
炊事場をのぞいたが
すでに灯落ちて
人影は無し
それから
納屋でみつけたコオロギと
自分の運命を
取り替えた男の子がいて
納屋を出たとたん
ニワトリに喰われてしまったから
以来、 その家の男の子は
じつはコオロギなのだが
日曜の午後のおやつは
母さんの焼いたビスケットと
リキュルを落とした紅茶
父さんのタバコはいい匂いがして
一家は幸せそうである
ファントマ
屍体はどこにもころがっている
誰がやったの
ファントマさ
誰なの それは
何なの それは
どこにいるの そのファントマは
世界の上 そしてパリの上
そいつは どこにも現れて どこにも現れない
新聞記者も マドモアゼルも
ボノー一味も 警官も
彼を追ったり 追いかけられたり
かかわる者は誰一人 ほら そこのあなたも
いつか自ら ファントマと化して 約束の舞踏会
オペラ座でワルツ
パレ・ロワイヤルで輪舞
警視庁で歌って踊って
パリの屋根々々を セーヌの岸を
笑って 喚いて タブレット噛んで
誰も 彼も あなたも わたしも
名はファントマ 正体もファントマ
そして ラジオの一報は
どこか遠くで 見知らぬ岸に
乗り上げる大西洋横断汽船
おお ファントマ 灰色の瞳のおまえ
男だけの町
歩いているのは
男ばかり
あいくちを
懐に忍ばせて
この町で
独りあることは許されない
孤立をさとられたものは
すでに死者も同じ
たちまち
四囲をふさがれて
めった刺し
せせら笑いに送られて
町を去るしかない
行き先は
あの世だけ
もっとも
そんな世があるとして
そういえば女がいないな
殺してしまったのだろうか
ふと男たちは
そんなことを思ったりするが
考えは長くつづかない
深々と刺し込んだ
あいくちの柄を濡らす
やわらかいもの
やさしいもの
なまあたたかいもの
感触は残っているのだが
それが女というものだったか
いつの季節も
風の止まないこの町で
歩いているのは男ばかり
はたはたと
はためいて
いつかの夏の
売り出しを告げる
埃まみれの幟
袋小路に踊る藁くず
屋根を離れて
高々と
舞い出そうとするトタン板
ときに
こずえの悲鳴を聞きつけて
何かの思いが
男たちの胸をよぎらないではないが
それはつかの間
汚れた運河が
風に波立つこの町を
歩いているのは男ばかり
めずらしく
風の静かな午後
波の鎮まる一瞬があって
そんなときは
つい岸に近寄って
運河の水に
自分の顔を映してみたい
衝動にかられるが
そんなことをすれば
たちまち
背後からめった刺し
油断も隙もない
この町で
生きて行けるのは
用心深く
暗い眼の男ばかり
そうと知ったら
そうと知ったら
輪になって踊れ
赤い狐も
天竺ねずみも
はぐれ鴉も
輪になって踊れ
どうせ一度は誰も死ぬ
そうと知ったら
みなし児も
帰化した人もせぬ人も
旅のお方も
輪になって踊れ
どうせ一度は誰も死ぬ
あの娘もとうとう死にました
恋の悩みに死にました
そうと知ったら
輪になって踊れ
影踏
影踏を知ってるかい
相手の影を
踏んだら勝ち
踏まれたら負け
月夜の晩に
鬼の子がする遊びだよ
ほら、 あの子
夜ふけて
ひとり影踏
田園風景
おや、 あの爺ちゃん
あぜ道で臍 (へそ) を落として
しばらく泥田を
かきまわしていたが
どうやら探すのをあきらめて
今日からは臍のない人生
まあいいか
そう長い余生でもない
泥だらけの手を頭にやって
爺ちゃん、 てれ笑い
里人の臍落したる田螺かな -- 嵐推
父帰る
フキの畑で
姿をくらましたきり
とうちゃん、 どこへ行ったのか
なあ、 かあちゃん
とうちゃん、 どこへ行ったんだよ
うるさいやつだね
とうちゃんとうちゃんて
そんなにおまえは
とうちゃんが好きか
これヨシオ
ゆだんするんじゃねえぞ
かならずとうちゃんは
帰ってくる
かならずとうちゃんは
おれたちを殴りに帰ってくる
だから、 ゆだんするんじゃねえ
しんばり棒はしっかりかったか
べんじょの窓はふさいだか
ふろ場の口にクギは打ったか
あまったクギは庭にまいとけ
なあ、 かあちゃん
なんだようるさいね
用事があるならはやく言え
そんなにおまえは
おれがきらいか
あのなあ、 かあちゃん
きらいというわけじゃないんだが
しんばり棒は手おくれかもしれねえ
なんだかとうちゃんが
そこらに来てるような気がしねえか
なんだと、 そこらに来てるだと
見ろ、 かあちゃん
やっぱりだ
あそこで、 ほれ
隣の柿の木に火を吐いてるのは
とうちゃんじゃないか
父帰る
いつ身につけたか
思いもよらぬ火噴きの術
あの気の小さいとうちゃんが
何おそれげなく目をむいて
あの見栄えのしないとうちゃんが
身の丈さえも一尺は伸びて
態度はでかく、 足取り太く
厚い真っ赤な唇から
囂々と火を噴いて
しかも愉快に笑っているではないか
おーいとうちゃん、 おーいとうちゃん
よくあんた、 まあ、 無事で
なんだ、 おまえら、 まだ起きてたか
よし、 それならちょうどいい
いまからおまえたちに
火噴きの術をおしえよう
これからは親子三人
なかよく毎日
火を噴いて暮らすのだ
マザーグース風
月の畑で
瓜を喰う人
裏の小藪で
雨を待つ人
三人目は誰ぁれ
風の河原で子を拾い
いがみあい
裏通りに床屋が二軒
あちらの店の
赤白青のねじりん棒の脇で
爺さんがタバコを吸いながら
通行人を品定め
こちらの店の
赤白青のねじりん棒の脇でも
爺さんがタバコを吸いながら
通行人を品定め
いがみあって半世紀
ふたごの床屋だそうです
夏休み
長い長い夏休み
そうだった、 わたしは
夏休みの続きをしてたんだ
長い夏休みの途中で
わたしはよそへ行ってしまって
夏休みだけが
どこかでまだ続いてる
行かなくちゃ
わたしのいない夏休み
たとえばそこの…
たとえばそこの蛸
水族館の水槽の底にわだかまって
疑い深くこちらを見てるやつ
いつも世界を憎んでるのか
通りすがりのおれを
たまたま憎んでみただけか
バラード
なにが悲しいのか
トゥームストンから、 アンテロープ、 ソルジャーズヒルと
牧場から牧場をはしごして、 十日と十夜、 飲みに飲みつづけ
十一日目の夜はサルファスプリングス
奥さん、 あんたにはわからない
本人のおれがわからないんだから
他人のあんたにわかるはずもない
そして十二日目の朝早く
台所をぶち壊された未亡人に見送られ
日の出とともに馬に乗る
誰にも知られた
名はリンゴー
年は三十路も、 はや半ば
死ぬにはちょうど、 ころあいの
保安官補のビルが言うには
ドラグン山の峠で会ったよ
あいつ、 幽霊みたいだったなあ
ふもとを見下ろす岩の上で
顔青ざめて、 まだ飲んでたが
あれが最後のボトルではなかったか
飲み終えると、 岩に叩きつけて
ふらふら峠をおりてった
十三日目の夕方ちかく
サルファスプリングス渓谷の
樫の根元に腰をおろし
右手に拳銃をにぎりしめたまま見つかったのは
もう生きてはいないリンゴー・キッド
右のこめかみに射入孔
左のこめかみから噴出した脳漿が
樫の幹にはり付いて
ゴムみたいに固まっていた
なにをしに
どこへ行こうとしてたのか
背中の幹に自分で刻んだ墓碑銘は
「たぶんテキサスから来た男」
幻灯師
壁に大きな黒い影
好きなんだよ、 みなさん、 これが
自分じゃないみたいでね
いや、 自分みたいでか
光源が動くにつれ
するする影が伸びて
むくむく影が太って行って
おお、 おお、 これがおれの影
とても影とは思えない
力強くて猛々しいやつ
怨みをこめた凶々しいやつ
さすが幻灯師、 いま評判の
影はいかが
とても本人とは思えない
みごとなやつをご覧に入れます
いま世間で評判の
わたしは影を売る幻灯師
風に吹かれて、 さらわれて
影が消えると
がっかりしますがね、 みなさん
しょせん自分の卑小さに
でも夢はだれも見る
いかがですか、 影ひとつ十二ドル
お望みならば、 おまけを付けて
今夜の夢のお供にも
月のドラゴン
ああ、 今日も
陽は落ちて
懐かしい日暮れ時
赤い目を怒らせて
ドラゴンがやって来る
西郊を踏み荒らし
送電塔を蹴り倒し
街道の車列をなぎ払い
どこまでも渡る咆哮
ひび割れる空
燃え上がる町々
ああ、 どうしておれは
ここにいるのか
そして今夜も
暮れなずむ空に向けて
ドラゴンは月を吐く
火ねずみの少女
火ねずみの年に生まれて
わたしは火を呼ぶ少女です
赤い炎も緑のそれも
お好みしだい呼ばれしだい
炭火、 篝火、 漁火、 焚き火
どんな火種も呼べるけれど
呼ばれて一番うれしいのは
広くて大きな野火かしら
火ねずみの月に生まれて
わたしは火を呼ぶ少女です
青い炎も黄色いそれも
お望みしだい頼まれるまま
付け火、 もらい火、 送り火、 鬼火
どんな火種も呼べるけれど
呼ばれてついつい笑うのは
やがて悲しいねずみ花火
火ねずみの日の
火ねずみの刻 (とき) に生まれて
私は火を呼ぶ少女です
フクロウの来る夜
すると夜中に
フクロウがやってきて
丸い大きな金色の目で
じっとおれを見る
知恵と度胸と器量を兼ね備えた
まるでおれみたいなやつだ
残酷で優しい
まるでおれみたいなやつだ
わかってるとも
フクロウの現れるのは
いつもこんな夜
おれに勇気を運んでくるやつ
時代劇みたい
手を取りあって二人
時代劇みたいに
野を駆けて
いわし雲の下を
どこまでも逃げて行ったよ
今ではどこか
他人 (ひと) の物語を思わせて
二人の後姿だけ
よみがえるのだが
どこにどうしているか
お前もときには
あの日の秋空とおれたちを
野を駆けた二人の姿を
思い浮かべることはあるか
幽霊船
港の隅で
浮いたり沈んだり
目立たぬように
ひかえめに
すまんなあ
こんな姿で
帰って来るとは
幽霊船が影薄く
故郷の港で
浮いたり沈んだり
ベジタブルソング
売り言葉に買い言葉
むかし歌ったベジタブルソング
なんのなんの
ベジタブルソングのひとつやふたつ
おれだったら五分もあれば
仕上げるさ
ねぎと大根重ねて延べて
菊は酢の物、 葵は干物
午前三時のからし蓮根
浜のきゅうりになすびを添えて
わかめ、 ひじきが野菜なら
煙草、 大麻もベジタブル
競りも終わった野菜市場の
京菜の陰で泣いてても
しょうがないっていえば
しょうがないから
おれは今日も
シンギングソングライティングしてるんだが
いまいち
葉物では力が出なくて
ごぼう、 にんじん、 さつまいも
こってりこねて、 さあどうだ
とばかり
ベジタブルソングの三つ四つ
ぶつけてみても
玉ねぎ、 それも腐ったやつを
ぶつけ返されたら
負けるなあ
夏の国
目をあけると
そこはもう夏の国
はるかに遠いひまわりの国
故旧
ひさしぶりに届いた手紙は
三年いや四年前と変わりない
描線鋭い黒インクの春画
どこから誰が送ってくるのか
つつがなしや友がき
口ずさんでも思い当たるふしはなく
おれたちをつなぐ何があって
ときに便りは送られてくる
七夕
誰かが殺された日
でも、誰が殺されたのか
南の国の王子だったか
あるいは王だったか
縊り殺されたのだったか
刺し殺されたのだったか
沸き上がる読経
七夕の四百八十寺
ようやく…
ようやく噴煙がおさまって
住民たちがアパートに帰り着くと
どのベランダからも
鴉の姿が消えていた
誰かの声がほんとうらしく言った
「今度は、あたしたちが
ベランダで飼われるのよ」
偽日記
きょうはウスクダラ
夢にはるばるたずねた町は
赤い夕陽に黄色い犬が
遠くさびしく吠える町
恋の都と聞いたのだけど
サマータイム
そんな夢を見ただけさ
大きくなっても
せめて心はしあわせであるように
誰かが歌ってくれた夢
夏の日の午後
すず風の通り過ぎてゆく木陰
しずかに揺れるハンモック
眠れ良い子は、 良い夢見ながら
川さえ流れるお屋敷の
その川で魚たちは跳ね
森さえあるその森で
楽しげにさえずる小鳥たち
そんな夏の日の夢を
誰かが歌ってくれた夢
トランプ芝居
白人のピエロが
たがいに殴り合って
殴られるたびに
トランプをひっくり返すみたいに
白人のピエロが
黒人の旅人に変わって
あれまあ、 おれは
白人のピエロのつもりだったが
じつは黒人の旅人だったか
徒歩で行こうか
このまま馬車か
それとも船でミシシッピー
考えてる間に、 また殴られて
また殴って、 また裏返る
白人も四人、 黒人も四人
あわせても四人
彼ら四人のわきで
四人を運んできた馭者が
乗合馬車に火を付ける
妖物
大宮から北
油の小路から東
西洞院からは西
陽成院の御所といえば
寝殿の屋根はぼろぼろ
築地はばらばら、 草はぼうぼう
いまや化け物の住処 (すみか)
と、 できれば都人でさえ
避けて通りたい一帯なのだが
そんなところにも
御所の暮らしはあって
ある晩、 大きな池のある釣殿で
番の男が眠っていると
どこからか自分が現れ
枯れ枝のような細い手で
枯葉みたいにさらさらさらさら
男の顔をなでていたら
なんと男は
いきなり太刀を抜き放ち
一方の手で鷲づかみにされて
身動きもできない自分は
「いや、 ごめんなさい
自分は昔
ここに住んでいた主であります
浦島の弟であります」
と、 わびしい声で言ったのだが
はて、 自分はどこから現れたか
ここに住んでいたと言うからには
この池から沸いたのか
また、 自分が言うには
ここに住んで千二百年になるという
してみれば、 この池も
千二百年前からあるのだろうか
「ほんとうに、 ごめんなさい
もう脅かしたりしませんから
ここに社 (やしろ) を造って
わたしを祀ってくださいな」
すると男が言うには
使用人の一存では計らえない
まず院に相談してから
と、 なんとふざけた返事では
ありませんか
自分は男の体をひっつかみ
上方へ投げ上げ投げ上げること三度
へなへなくたくたとして
落ちてくるところを
ぱっくり大口を開けて
飲み込んだのでありました
ふいに秋の寒さが身にしみて
薄い単衣 (ひとえ) をかきあわせながら
さあ、 それからどうしたのか
雲の絶え間からもれる月光の中を
またもどこかへ、 自分は
消えて行ったのでしょうか
迷路
迷路のように続く路地を
どれほど歩いたか
魚介市場から
二階の窓を通って
公権と私権の入り組む
張り出し通路を抜け
三階の賭場から地下へと続く
狭くて急な階段を
「それは二重人格の代名詞です」
部屋からもれる声を聞き流し
もう三日も歩き続けて来たろうか
いったい誰に呼ばれて
城砦でもあるような
入り組んだ廃線でもあるような
四階からだったか
もっと上の階からだったか
わたしに呼びかけた女は
いくら迷路を
たずね回っても
「誰も呼んだり
しなかったわ」
いつか巡り会うことがあったら
必ずやそう言うにちがいない
酒場にかかった絵看板の
薄笑いの男たち、 そして
なおも印刷所から
旅商人の夫婦が
抱き合っているベッドを横目に
過ぎて、 井戸のある小さな広場へ
そこもまた
四方の建物へ旋回して
昇ってゆく階段や
街へと続くらしいトンネルや
ひしゃげたベンチや長い花壇の
交錯する場なのだが
時は流れ、 今は春
嘘みたいな夜気
狼男
満月が近づくと
いても立ってもいられない
なんだ、 この胸騒ぎは、 この衝動は
月の引力に
心臓が引き寄せられて
勝手に舞い上がろうと
してるのか
待てよ、 心臓、 おれも行くから
四肢も毛並も、 丸ごと狼と化して
バラード
なにが悲しいのか
トゥームストンから、 アンテロープ、 ソルジャーズヒルと
牧場から牧場をはしごして、 十日と十夜、 飲みに飲みつづけ
十一日目の夜はサルファスプリングス
奥さん、 あんたにはわからない
本人のおれがわからないんだから
他人のあんたにわかるはずもない
そして十二日目の朝早く
台所をぶち壊された未亡人に見送られ
日の出とともに馬に乗る
誰にも知られた
名はリンゴー
年は三十路も、 はや半ば
死ぬにはちょうど、 ころあいの
保安官補のビルが言うには
ドラグン山の峠で会ったよ
あいつ、 幽霊みたいだったなあ
ふもとを見下ろす岩の上で
顔青ざめて、 まだ飲んでたよ
あれが最後のボトルではなかったか
飲み終えると、 岩に叩きつけて
ふらふら峠をおりてった
十三日目の夕方ちかく
サルファスプリングス渓谷の
樫の根元に腰をおろし
右手に拳銃をにぎりしめたまま見つかったのは
もう生きてはいないリンゴー・キッド
右のこめかみに射入孔
左のこめかみから噴出した脳漿が
樫の幹にはり付いて
ゴムみたいに固まっていた
なにをしに
どこへ行こうとしてたのか
背中の幹に自分で刻んだ墓碑銘は
「たぶんテキサスから来た男」
幻灯師
壁に大きな黒い影
好きなんだよ、 みなさん、 これが
自分じゃないみたいでね
いや、 自分みたいでか
光源が動くにつれ
するする影が伸びて
むくむく影が太って行って
おお、 おお、 これがおれの影
とても影とは思えない
力強くて猛々しいやつ
怨みをこめた凶々しいやつ
さすが幻灯師、 いま評判の
影はいかが
とても本人とは思えない
みごとなやつをご覧に入れます
いま世間で評判の
わたしは影を売る幻灯師
風に吹かれて、 さらわれて
影が消えると
がっかりしますがね、 みなさん
しょせん自分の卑小さに
でも夢はだれも見る
いかがですか、 影ひとつ十二ドル
お望みならば、 おまけを付けて
今夜の夢のお供にも
秋夜
今夜も蝦蟇 (がま) となって
縁側から庭を見ていると
なにやら懐かしく
わびしさ限りなし
どこにどうして
俺はいたかと思い返せば
ここにこうして、 昔から
いたのだったと
土の塀にも石の庭にも
青い月の光が
笹の植え込みにも
あふれるほどにそそいで
あたりはもう
静かな湖の水の底
ゆらゆら俺も
月光に泳ぎ出そうか
狂牛
遠い街道を疾駆する狂牛の
蹄の音を聞いたのは
いつの夢だったか
汗ぐっしょりの
夏の夜明け
だったろうか
カーテンを揺らす風の
冷たい秋の
夜半だったか
隣に誰が寝ていたか
おれ一人の夢だったか
誰かと二人で見たのだったか
だけど、 あれは
夢なんかではなくて
遠い街道を
たしかに狂牛が
駆け抜けたのではなかったか
夢と記憶は
似たようなものだから
おれはそれを
夢と呼んでいるだけ
一角獣
国境の麦畑を
ジャンがやってくる
国境の麦畑には
一角獣がひそんでいるはずと
ジャンはいま察したところ
けれど真理を知ったものが
どんな顔をするかといえば
そんなことを知ったという事実に驚いて
でも、 大きな驚きではない
少し呆 (ほう) けた顔をして
あると察した真理のあたりを
焦点不確かにながめるだけ
そして私が
姿を現すことはない
真理の在りかを知った男と
真理そのものである私が
出会ってしまったら
なんだか気まずいではないか
静けさとは
ジャンよ、 おまえも
どんなものか知っただろう
静けさとは
音のないことではない
空にはヒバリが鳴き
麦の穂をなでて風がわたり
どこかで水車が軋 (きし) んでいて
陽光のそそぐ音さえ聞こえそうな
そして、 どこかに
一角獣が
潜んでいるのだということ
幸運を、 よい旅を
フクロウの来る夜
すると夜中に
フクロウがやってきて
丸い大きな金色の目で
じっとおれを見る
知恵と度胸と器量を兼ね備えた
まるでおれみたいなやつだ
勁くて優しく残酷な
まるでおれみたいなやつだ
わかってるとも
フクロウの現れるのは
いつもこんな夜
おれに勇気を運んでくるやつ
花畑の夢
黄色い花畑に
血しぶきが降りそそいで
斬られたばかりの首が
投げ込まれる
春の陽にうつらうつら
どこかでヒバリの声がして
花畑も夢を見る
