[詩] うすら笑いの人形と
腹話術師のおいていった人形が押し入れにある
めったに思い出すことはないが
でも、 ときには思い出す
ときには思い出していたのだが
このごろは、 ときどき思い出す
「ときには」 と 「ときどき」 では
どちらがしばしばかといえば
おれが思うに 「ときどき」 のほうが
ひんぱんではないか
なんて言ってるうちに
昨日今日は四六時中思い出されて
しかたないから
カビくさい人形を
押し入れから取り出して
おれも旅に出ようか、 腹話術の旅に
腹話術師がおいていったと
さきほどは言ったが
ほんとうは捨てていったのだと思う
腹話術師の捨て子をつれて
旅に出ようか、 おれも
またある晩は
うすら笑いの人形と二人連れ
とても話はつもるから
赤い半月の下を
どこまでも旅に出る
そんな歌もあったくらいで
旅立ちは、 やはり夜がいい
捨て子以外は何もかも捨てて
