2008-07-06
[]  炭坑武士
夜の炭鉱町である
浪人が空を見ている
空には月がかかっている
住人はみな眠っていて
ほかに人影はない
猫が道を横切る
「おあつらえだな」
浪人の顔に、 苦っぽく
笑うような笑わないような笑い
三井だの三菱だのが
炭鉱を経営していたこの時代
なおも武士というものが存在したか
自分の存在があやふやに思われ
存在していたとしても
場違いな感じは変わらない
「謡 (うたい) でもうたうか」
さっきの猫が
道を反対方向に
横切るのを待つ気持ちがあるが
腕組みをして待っても
そのことは起こらない
感覚をこらすと
思い出に似たかすかな喧騒
町が昼間の
夢を見ているのだ
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